夕焼け色

冬の夕焼けは、好き。


だって、すぐに消えてしまうもの。
まるで、あの人とのキスの感触のように。


ぼんやりと、いつのまにか、音もたてずに消えてしまうの。



今日、彼氏という存在を失った。
突然に、いつのまにか、そう、まるで夕焼け空みたいに、いつのまにか。


でも、恋は失っていない。
だから「失恋」とは違うの。
泣き疲れた女の子の悲しい言葉遊びなんかじゃない。
「失恋」はきっと、フラれた時にその人に恋した淡い、淡い記憶まで失ってしまうから「失恋」なのよ。


私は、失わないわ。
いつまでも、夕焼けの色にも似たあの気持ちを忘れずにいよう。
夕焼け空を見上げて、涙を拭って、そう思うの。



ピンと澄んだ冬の空気の中、夕暮れ色ににじむ空。
でも、だんだんと夕暮れ色は夜に支配されていく。


儚い、色。


恋は儚いなんて誰が言ったのかしら。


それでも、私は冬の夕焼けが好き。


だって、あの人の腕の中にいるみたいに、きっと、きっと温かいから。


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