「いい曲だね。眠くなる」
「だからって寝んな。」
そいつは、そう言うと腕組みをして何か考えるそぶりを見せ、唐突に言った。
えらく明るい口調で。
「よし、お前オレの友達1人目な!」
「は…!?」
訳のわからない言葉に声が詰まった。
「オレさー。友達いねぇんだわ」
そりゃそんな外見じゃムリないね。
「だからさ、お前も友達いなさそうだからオレとお前は友達ってことな」
「友達くらいいるって!」
「そうか?まぁいいから友達になれって」
外見が怖いだけで、けっこうアホな奴かも。
しかもいい奴。
「友達…。別に、いいけど…?」
オレが答えるなりそいつはオレの髪をくしゃっとつかんできた。
「で、お前の名前は?」
「…秋田京介」
正直に答えた。
「京介か。オレはあれだ、俊哉だから俊って呼べよ」
「…わかったよ、俊」
「よし!じゃあオレは京って呼ぶわ」
「京か…。そんな風に下の名前で呼ばれるの初めてかも」
「やっぱ友達いねぇじゃん」
「ほっとけっ!」
なんだか嬉しかった。
「今度さー、ピアノオレの目の前で弾いてよ」
「じゃあ、入学式の後オレんち来いよ」
「あ!行く行く!」
高校生活は楽しくなりそうな予感がした。
そして、オレは頭一個分背の高い笑顔の俊と並んで、入学式に向かった。
ノクターンという曲の、鼻歌を歌いながら。
-Fin-