「お前さ、毎日毎日イビキうるさすぎ」
「は…!?」
予想もしなかった言葉にオレは驚いた。
「オレがピアノ弾きだすとイビキ聞こえだすからな。練習になんねえじゃん」
やっぱりピアノ弾いてたのはこいつか…!
「ご、ごめんっ。なんか綺麗な音だからつい…」
オレがあたふたと答えるとそいつはいきなり、にかっと笑った。
「綺麗な音って、お前いいこと言うじゃん」
「へ…?」
「そんな綺麗だった?」
「すごい綺麗だった…。って怒ってるんじゃないの…?」
オレが言うとまたにかっと笑ってそいつは言った。
「別に。オレ心広いから」
は…!?
まさか、いい奴…!?
「あ、そう。心広いんだー」
返事に困って適当に言うと
「なにそれ?馬鹿にしてんの?」
睨まれた。
「違う違う違う!それより毎日弾いてる曲なんていうやつ?」
やっぱり怖いかも…。
「ん?あれか?あれはショパンの『ノクターン 作品9の2』ってやつ。いい曲だろ?」
バッハやベートーベンじゃないのか。
聞いたことない曲名だけど覚えておこうと思った。