毎日、飽きもせずにピアノの音色ばかり聴いた。
入学までの暇と退屈をピアノの音色で埋めた。


そして、入学式の日。

昨日もピアノ聴きながら寝たのか。

ピアノのおかげで気分良く目覚めると、支度をはじめた。

制服にネクタイも締め、スラックスもはいた。

「よし!いざ入学!」

ガチャリと玄関のドアを開け、鍵を閉めると、何の前触れも無く隣の部屋のドアが開いた。

「!」

出てきたのは

男だった。

スラッとした背の高い奴だ。
そして、金色と銀色の間のような色の髪の毛。
ピアスまでしてるし。
鋭い目がオレを睨む。

なんだよ。ものっすごい怖い人じゃないか!
こんな奴がピアノ弾いてたのか…!?
てか、ホントに学生かよ!?

心の中だけで叫んだ。
口に出そうものなら絶対やられる気がした。

そそくさと逃げるようにこの場を立ち去ろうとするオレ。

後ろから視線を感じながらも、どうにか道路に出るところまで行ったところで


呼び止められた。

「ちょっと、お前」

ビクッと全身の毛が逆立つのがわかる。

「…は、はい…?」

振り返らずに答える。

「お前、隣の部屋に住んでるだろ?」

「そ、そうだけど…。何か…?」

今度は振り返って答えると、そこには鋭い目のさっきのあいつがいた。

なんか怒らすようなことやったか…!?
逃げたのがまずかったのか…?




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