「先生はその闇が怖いでしょう?」
外はまだ昼だというのにこの薄暗い部屋はさらに闇へと沈んだように私に重くのしかかる。
「・・・・・・」
私の沈黙を肯定と判断したのか、彼女は話を進める。
「闇に呑まれそうな人はたくさんいます。
けれども、それは闇と向き合おうとしないからです。
自分自身の闇の全容を理解しようとせず、心の底に沈めようとしているのです。
だから、その闇がふっと顔を出したとき、それに呑み込まれてしまうのです」
「・・・・・・」
いつのまにか、立場が逆転していた。
カウンセラーであったはずの私は患者であったはずの八島紀子にカウンセリングされていた。
「話してください、先生の闇を。そして、向き合ってください」
静かな彼女の言葉に促され、私はぽつり、ぽつりと闇を吐き出し始めた。