英多はずっと立ち尽くしていた。
きっかけがなければずっとこのまま立っていそうだ。
しかし、
「見事に」
「フラれたな・・・」
という親友達の言葉にはっと我に返った。
「まぁ気にすんなや。こんなこともあるって」
「な、次の恋があるよ。オレ達もついてるしさ」
「そうだね・・・」
英多はずっと我慢してたものを親友達のやさしさに我慢しきれなくなってついに出してしまった。
涙は頬を伝い、地面にポタッと落ちる。
幾重にも重なる涙の筋は彼女への思いの深さだった。
ポンッと佑也が肩を叩く。
「涙は枯れるまで流したほうがいいらしいよ」
啓介が頭をくしゃっと撫でる。
「オレらはこれからもずっと一緒やから大丈夫やで」
親友のやさしい言葉に、英多は少し救われたように、かすかに微笑んだ。
「うん・・」
もうすっかり空は紺色に染まり、空には秋を思わせる月が浮いていた。
三人はゆっくりと、街の深い青へと歩いていく。
ときたま通る車のライトが彼らの顔を眩しく照らした。
―――持つべきは親友
そんな言葉が心の中にあざやかな色に浮きあがった。
それは街の紺色を綺麗な虹色に染め上げ、いつまでも三人をやさしく包み込んでいた。
季節は晩夏。
夏はすっかり色を失い、
秋が、もうそこまできていた。
〜END〜