―――キーンコーンカーンコーン
 いつもの、もう何度聞いたことかわからないあの音が鳴った。
 と、ガララッと教室の戸が開いたかと思うと、少年が駆け込んできた。
 長くもなく短くもないさらさらの黒髪に高くはないが低くもない背。
 平均的と言ってしまえばそれまでだが、気取らない、素直そうなところが彼の魅力とも言える。

 「遅刻じゃないよね!?」

 「いや、遅刻や」

 「珍しいじゃん。どうしたの?」

 彼の問いに佑也と啓介が口々に答える。
 どうやら彼らが言っていた英多とは彼のことらしかった。

 遅刻の訳を聞こうと英多の周りに集まる二人だが
 「よし。授業始めるぞ」
 という教室に入ってきた先生の言葉に促されて二人はしぶしぶ自分の席へと戻っていった。


 一限目が終わった後の休み時間、裕也と啓介の二人は英多の机を囲んでいた。

 「英多が遅刻とは珍しい」

 「なんかあったん?」

 「いや・・・。何も」

 床に座り、英多を見上げる二人に英多は少し素っ気なく答えた。
 目を合わせようとしない。  そんな英多にまた二人が突っ込む。

 「言えやー。隠し事とか大嫌いやわ」

 「悩んでる事あるんなら相談乗るよ」

 親友のそんな言葉にもまた素っ気なく答える。
 「悩んでなんかないよ」

 「ははーん」

 英多の態度に佑也は何か感づいたらしく何やらにやにやしだした。

 「さては英多。恋をしたなー!」

 「は・・!?ち、違う違う、絶対違う!」

 うれしそうに立ち上がって言う裕也に英多は顔を赤らめ必死に否定する。

 「うわ、図星っぽいやん」

 「誰、誰?うちのクラスの子?」

 「だから違うって!」

 「隠さんでもええやろーが」

 「オレら親友だろー」

 「ああもうっ!うっとうしい!」

 英多は二人を追っ払おうとするが逆に裕也に羽交い絞めにされた。
 そして、身動きの出来ない英多を啓介が脇やら首やらくすぐりはじめた。
 見事な連係というか、何とというか。

 「あ、あははっ!やめ!やめてってー!」

 「じゃあ認めろよ。恋なんだろー」

 「認めんとずっと続きますで。英多くん」

 うれしそうにくすぐる二人に英多は

 「わかったわかった!言うからやめろっ!!」

 とうとう白状した。




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