季節は、晩夏。
うだるように暑かった夏も終わりを見せ始め、夕方にもなると涼しい風が吹く。
うるさかったセミも鳴き声を聞かせなくなり、秋の予感を感じさせた。
とは言え日中はまだまだ暑く、夏もしぶとく居座っているようだ。
そして、少年少女達にとっての夏は終わり、またいつもの学校という日常の中に戻っていく。
そう、二学期が始まる。
「へへ、またまた告白されたわー。ったく困るよ」
少しおどけた声が教室に入ってきた。
途端に教室がざわめきだす。
「またかよ!?」
「でもいつもの通りフッたんだろ、佑也?」
「ちょっと顔が良かったらこれだもんな、女は中身を見てくれないんだよなー」
教室のあちらこちらから不満の声があがる。
「佑也」と呼ばれた少年は整った目鼻立ちに少しウェーブのかかった茶色い髪。
確かに女の子にウケそうな顔ではある。
彼は「まあなー」と適当に返事をしながら教室の一角へと向かった。
佑也の向かう先には一人の少年。
「よぉ、また告られたとは羨ましい」
「おはよ、啓介」
佑也に声をかけた少年は短い髪が似合っているどちらかと言うとスポーツマンみたいな印象だ。
「ホンマ、女のことしか考えへん奴やな。ちったぁ野球見れ、野球!」
関西弁で話す彼からは、関西人ならではの人なつっこさが感じられる。
「ごめん。オレ野球全っ然興味ないわ」
「はぁ!?お前それをオレに言う度胸だけは認めてやるわ!」
「あはは。許せって。悪かった悪かった」
首に手をまわした啓介に、笑いながら謝る佑也。
誰もが認める仲の良さである。
じゃれあっていた二人だが、ふと佑也が何かに気付いたように不思議そうな顔をした。
「あれ?英多の奴は?」
聞くと、啓介も不思議そうな顔で答えた。
「まだ来てへんねん。珍しいよな」
「ふーん・・・。ホント珍しいな。あいつ、いっつもオレらより先に来るのにな」
「さては寝坊やな。」
「お前じゃないんだから寝坊なんかしないでしょ」